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小児喘息について

小児喘息の特徴と診断

まず、気管支喘息とは「発作性に起こる気道狭窄によって、喘鳴・呼気延長・呼吸困難を繰り返す」ものです。わかりやすくいうと、風邪を引くなどの様々な刺激が加わることで気道の中の気管支が狭くなって、息をする時に「ゼーゼー、ヒューヒュー」したり、呼吸が苦しくなってしまうのを繰り返すものです。

ただ、この「ゼーゼー、ヒューヒュー」がした場合に喘息かというと、子供の場合は必ずしもそうではありません。特に2歳までの乳幼児はもともと気道が細いので通常の風邪をひいてもヒューヒュー、ゼーゼー、ゼロゼロという音がよく聞かれます。

次のような症状が出る場合には喘息が考えられますので注意してください。

  • 日中は元気に遊んでいても、夜から明け方にかけて咳き込んで目が覚めてしまう。
  • 布団の上で遊んだり、ホコリを吸ったりすると咳が出て息苦しくなる。
  • 運動をすると、咳き込んだり、ゼーゼーして息が苦しくなったりする。
  • 花火やタバコの煙を吸い込んだとき、咳き込んだり、ゼーゼーして息が苦しくなったりする。

喘息は乳幼児期の発症が多く、以後、緩やかな発症が続きます。喘息の約9割は6歳までに発症すると言われています。

12歳か13歳頃までに5割から7割程度が寛解(服薬等の治療をしていなくても症状がない状態)すると言われていますが、残りの3割から5割は、成人まで症状が持ち越したり、一時的に寛解していたものが再発すると報告されています。経過は、一人ひとりの症状や年齢などによって異なります。下記は、喘息の発症年齢を表しています。

喘息になりやすい子供としては、家族が全員喘息だと子供もなりやすいと言われていますが、喘息の発症には環境因子の影響も大きいので、必ずしも発症するわけではありません。
また、アレルギーの病気(アトピー性皮膚炎、食物アレルギー、アレルギー性鼻炎など)がある人は喘息になりやすいです。アトピー性皮膚炎は早期にしっかり治療を行うことで、湿疹の部位からダニや食物などの成分が体内に入り、アレルギーを起こすのを防ぐことができます。

喘息の検査方法

喘息はTh2型免疫異常を基本病態としており、末梢血好酸球数、血清総 IgE 値、呼気中一酸化窒素濃度(FeNO)などのTh2型バイオマーカーや気道炎症の評価は診断と治療経過モニタリングに有用です。

  • アレルゲン感作の状況を把握するために、特異的IgE抗体測定または皮膚テスト(プリックテスト)を行い、発症および症状増悪因子同定の参考にします。

  • 気道炎症はFeNO 測定で簡便に評価できます。保険適用の検査として、日常臨床で利用しやすい検査です。
  • 呼吸機能などの生理学的指標は喘息の診断、治療の選択、治療経過のモニタリングに重要です。
  • 肺の換気機能をスパイロメトリーで評価します。肺活量、努力肺活量、1秒量、1秒率などの指標があります。スパイロメトリーの努力呼気時に得られるフローボリューム曲線のパターンは病態の評価に有用です。
  • β2 刺激薬吸入前後の1秒量を評価して気道可逆性を評価します。
  • 気管支過敏症を調べるために、気管支を刺激する運動負荷試験や薬物吸引負荷試験を行い、呼吸機能検査の変化(特に1秒量)がないかをみる気道過敏性テストがあります。

呼吸機能検査に関してはわかりやすい動画がありますので、是非参考にしてみてください。

小児喘息の治療

喘息の治療目標は発作を起こさずに健康な子供と同じように生活が送れることです。そのためには、薬物治療、環境整備、運動療法が重要になります。

まず、環境整備としては、アレルギーの原因となりうるアレルゲンやその他の気管支の刺激因子をできるだけ避ける環境整備が重要になります。

運動療法は、不安もあるかもしれませんが基礎的な体力をつけることで発作を重症化させないことや、発作が起こりにくかったりするなどのメリットがあります。

薬物療法は、喘息の発作を止める薬(リリーバー)と長期管理を目的として使用する薬(コントローラー)があります。コントローラーには、炎症を抑える 作用(抗炎症作用)持っている薬が使われます。一方、リリーバーは気管支を拡げる作用(気管支拡張作用)が中心です。

コントローラーの中心になるのが吸入ステロイド薬になります。
これは、喘息が気管支に常に炎症を起こしている状態の病気だと考えられているためです。また、その他にロイコトリエン拮抗薬などの抗アレルギー薬もコントローラーに用いられます。テオフィリン製剤はコントローラーにもリリーバーとしても使用できる薬です。しかし、血中濃度が上がりすぎると副作用が出るため、小児では5〜15μg/mLの範囲を目標に使うことになっています。

リリーバーの中心になるのがβ2刺激薬です。これは気管支拡張作用があるため、症状の緩和に働きますが、喘息の病態である気管支の慢性炎症を改善する効果はありません。なので、炎症を抑える作用のあるほかの薬剤と一緒に用いて、気管支拡張作用が必要な場合に必要な期間だけ使用する薬剤になります。

ご家庭で気を付けていただきたいこと

喘息予防の点で、禁煙、ペット、ダニ対策、大気汚染物質への注意、風邪予防は重要になります。家族の喫煙は子供の喘息発症や症状悪化の原因となり、タバコの煙は気道炎症を起こし、子供の肺の成長を妨げます。そのため禁煙は非常に重要になります。

ペットに関しては、犬や猫などの毛のあるペットへのアレルギーも喘息の原因になり得ます。また、毛だけでなくペットの尿や唾液に溶け出している物質がアレルギーとなります。これは、細かく空中を漂い粘着性が高く家具やじゅうたんなどにつく特徴があります。そのため、ペットの飼育にも注意が必要です。

小児喘息ではダニへのアレルギーが主要な原因になるので、細やかな掃除や寝具の手入れなどのダニを少なくする対策は喘息の悪化予防に有効です。室内外の大気汚染物質は気道を刺激して喘息を起こしやすくします。乳児期に風邪をひいてゼーゼーを繰り返す子供はその後喘息になる可能性が高くなるので、うがいや手洗いなどかからないようにする工夫が必要です。

また、セルフモニタリングも非常に重要になります。セルフモニタリングではピークフローと喘息日記がキーになります。

まず、ピークフローは最大の力で息を吐き出したときの息の強さを計測するもので、簡便に検査できます。自分の自己最良値を知っておき、そこからの変動を見ます。自己最良値の60~80%の場合には夜間発作や運動時に注意が必要な状態であると考え、60%以下であれば安静にしてても喘息の症状がある状態と考える必要があります。

喘息日記にはピークフローの結果とともに症状、日常生活の状態、薬の服薬状況、行動などを書きます。これをおこなうことでどのような時に症状が悪化するのか、その傾向を自分で把握することができます。さらにその傾向によってセルフケアもできるようになります。また、医療機関を受診する際にきちんと記録した「ぜんそく日記」をもっていくことで正確な情報提供ができ的確な治療につながります。

強い喘息発作のサインがある場合には急いで受診する必要があります。生活の中では、喘息の症状で遊べない・話せない・歩けない、食事がほとんど取れない、横になれない・眠れないなどの症状の場合には急いで受診する必要があります。全身の様子では顔色が悪い(唇や爪の赤みがない)、ぼーっとしていたり普段より興奮している場合、呼吸の回数がおおかったり、苦しそうな場合は緊急の受診が必要になります。緊急受診を行う場合でも受診の準備が整うまでは気管支拡張薬の吸入を行うことで症状緩和を測ることができますので必要に応じて行って下さい。

何か症状など不安があればご相談下さい。

文責:宮内 隆政

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