膀胱癌
膀胱癌と聞くとあまり聞き馴染みがないと思いますが、2019年に有名なキャスターの方が膀胱癌であることを公表してから割と皆様の認知度が上がったと思います。膀胱癌は年間2万人ぐらいの方が診断されており、決して自分には関係無いからと見逃すことは出来ない病気です。この記事では膀胱癌についての知識、検査、治療についてお話ししたいと思います。膀胱癌についてなるべくわかりやすく書きましたので一読してくださると幸いです。
◆目次◆
1 膀胱癌とは
1-1 どんな人が膀胱癌になりやすいのか
1-2 膀胱癌はどんな症状が出るのか
1-3 膀胱癌を治療せずに進行するとどうなってしまうのか
1-4 膀胱癌の種類
1-4-1 早期癌(筋層非浸潤性膀胱癌)
1-4-2 進行癌(筋層浸潤性膀胱癌)
2 膀胱癌の検査
2-1 尿検査
2-2 超音波検査
2-3 膀胱鏡検査
2-4 CT検査
3 膀胱鏡の治療
3-1 経尿道的内視鏡治療
3-2 開腹手術
3-3 ロボットや腹腔鏡を使用した手術
3-4 放射線治療
3-5 化学療法(抗癌剤治療)
4 診療費用
1 膀胱癌とは
1.1 どんな人が膀胱癌になりやすいのか
膀胱癌のリスクとしては男性、喫煙、化学物質に晒されていることが主に挙げられます。化学物質というのはナフチルアミンやベンジジンなどでこれらの物質に職業柄(染料などの製造工場)、日常的に晒されているとなりやすいとされています。
男性の方が多いというのは喫煙者が多いということも考えられると思います。また、糖尿病との関連もあると言われています。事実、先に述べた某有名キャスターの方も糖尿病を患っていました。糖尿病になると免疫力が下がるため、癌細胞に対しての免疫力も下がってしまうと考えられてます。
1.2 膀胱癌はどんな症状が出るのか
膀胱癌は無症候性の肉眼的な血尿というのが最初に起こります。無症候性の肉眼的血尿というのは、排尿時痛や残尿感、頻尿などの症状が何も出ていないのに、目で見てわかる血尿が出るというものです。これが膀胱癌の初期の症状です。進行するにつれて膀胱刺激症状が出てくる場合があります。膀胱刺激症状とは排尿時痛、残尿、頻尿などのことです。進行するとそれらの症状が出てきます。その後腫瘍の量が大きくなると腹痛や背部痛を伴うこともあります。初期症状から進行するまでの期間ずっと血尿は出続けますので、血尿が出るということは膀胱癌があるかもしれないという身体からの大切なサインなのです。
1.3 膀胱癌を治療せずに進行するとどうなってしまうのか
膀胱癌を治療せずにそのまま進行すると先述の通り痛みがお腹や背中に出ることもありますし、治療方法も初期であれば経尿道的内視鏡的治療(3-1参照)で大きな手術をせずに済みます。(尿道からの手術なので皮膚を切る必要がありません) ですが進行した場合には膀胱を全摘しなければならなくなります。もちろんお腹の皮膚を切る必要がありす。その場合は腸を膀胱の代わりにしてお腹から尿を出さなければいけない可能性もありますので膀胱癌と診断されたら早めに、進行する前に治療した方が良いのです。また、膀胱癌は肺やリンパ節に転移がしやすい癌なので、そのまま放置していくと最悪の場合お亡くなりになる可能性もあるのです。かつて世界的にも活躍した日本の有名な俳優さんが膀胱癌を放置してしまい、残念なことにお亡くなりになったこともあります。血尿が出た場合、絶対放置をせずに泌尿器科を受診しましょう。
1.4 膀胱癌の種類
1.4.1 早期癌(筋層非浸潤性膀胱癌)
早期癌というのは膀胱の筋肉の層にまで達していない、膀胱の表面にだけ癌ができている状態です。図のように筋肉にまで深く達してしまうと膀胱癌が膀胱内全域に広がって転移していることが考えられますが、筋肉に達していなければ転移をしていない場合がほとんどですので進行していない状態であると捉えます。このような早期癌であれば経尿道的内視鏡治療が可能となります。経尿道的な手術であれば皮膚を切る必要がないため回復が非常に早くなります。
1.4.2 進行癌(筋層浸潤性膀胱癌)
膀胱の筋肉にまで癌が達していると筋肉をたどって血流となり他の部分にまで癌組織が広がってしまうため、癌が転移している可能性が高くなります。また、膀胱内にも広がっている可能性が高く、膀胱全摘術を行うことになります。
2 膀胱癌の検査
2.1 尿検査
尿検査は泌尿器科ではとても大事な検査です。尿の中に白血球や赤血球が入っていないか、癌細胞やバイ菌が入っていないかなどを確認します。最近では尿検査による2種類の腫瘍マーカー(NMP22、BTA)が保険適用となりましたのでその検査を行うこともあります。
2.2 超音波検査
ゼリーを使って超音波が出る器械をお腹にあてる検査です。超音波検査は痛みや放射線の被曝を伴わないので体に負担がかかりません。膀胱の中に大きな腫瘍があった場合には超音波検査でわかることがありますが、腫瘍が小さいと超音波では膀胱癌を特定できない場合があります。
2.3 膀胱鏡検査
膀胱癌の診断の確定にはこの膀胱鏡検査が必要になります。尿道から直接カメラを入れて膀胱の中に癌があるかどうかを確認します。当院では柔らかい軟性膀胱鏡を使用していますので従来の硬いカメラよりも痛みが少なく体に優しい検査となっています。
2.4 CT検査
CT検査は膀胱癌のステージや肺やリンパ節への転移がないか、他の箇所への転移がないかを確認します。当院でも今後導入予定です。
3 膀胱鏡の治療
3.1 経尿道的内視鏡治療
この治療は早期の癌に行われます。尿道を通じて電気メスで膀胱の癌を切除します。手術時間は1時間程度で終わり入院期間も長くて1週間くらいとなります。腫瘍が大きかったり数が多いと手術後に膀胱の中に薬液(抗癌剤やBCG)を注入する場合もあります。
抗癌剤は文字通り癌をやっつける薬なので、この抗癌剤で残った癌を消滅させます。BCGは子供の頃に打つ予防接種と同様の薬です。BCGは弱毒化された結核菌なのですが、この結核菌が体内に入ってきたことで体は外敵が入ってきたとみなし膀胱の免疫が活性化されます。活性化された免疫が、癌細胞を退治するのに有効に働くということになります。3-5化学療法(抗癌剤治療)でも書いてありますが、化学療法の場合は抗癌剤を血液から注入するために重篤な副作用があるのに対し、こちらの場合はこれらの薬液を膀胱から注入するため重篤な副作用はありません。副作用としましては排尿時痛、残尿、頻尿などの膀胱刺激症状のみです。
3.2 開腹手術
お腹を開けて膀胱を一塊にして取り出します。尿を出す方法としましては腸を使ってお腹から排泄する方法やそのまま残った尿道につなげて自然に排泄するにする場合もあります。この手術は泌尿器科の中でも非常に難しい手術でもあり手術時間は3〜6時間程かかります。出血量も多くなることがあり非常に大掛かりな手術になります。合併症として勃起不全は必発となります。
3.3 ロボットや腹腔鏡を使用した手術
開腹手術と内容はほとんど同じで一塊にして取り出して尿路を変更するのですが、腹腔鏡やロボットを使うことで出血量をだいぶ抑えられます。これはお腹の中に二酸化炭素を充満させて密閉した状態で手術を行うため、二酸化炭素の圧力で出血が抑えられるからです。
また開腹手術に比べて傷の大きさも小さく済むため患者さんにとっては安全な手術になっています。ただし、これを扱える術者が非常に少ないため手術できる病院を探していかなければならないのです。当院からもこの手術が必要な場合は該当する病院を紹介しています。
3.4 放射線治療
浸潤性の進行した膀胱癌に対しては基本的には手術治療が必要ですが放射線治療を行う場合もあります。この放射線治療は膀胱の全摘を望まない患者さんや手術に耐えられない高齢者の患者さんに行われることが多いです。あるいは膀胱癌からの出血が多く手術ができない患者さんの出血を止めるために行うこともあります。
3.5 化学療法(抗癌剤治療)
基本的に手術の補助として手術の前後に行われます。腫瘍の量を小さくし、転移しているがんを死滅させることが目的です。データによると手術前に使用すると治療成績が上がるといわれています。抗癌剤を血液から注入するため副作用が全身に出てきます。吐き気や抜け毛、発熱、白血球の減少などの重篤な副作用があります。
血尿や膀胱刺激症状(頻尿、排尿時痛、残尿感など)のある方、膀胱癌に関して心配なことがあるなど気になる方はぜひ当院までお越しください。当院では泌尿器科の専門医がいつでもご相談にのります。
4 診療費用
当院は全て保険診療です。
初診の診療費用は薬代を除き、およそ下記のようになります。(3割負担です)
尿検査のみ | 2000円前後 |
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エコー検査のみ | 2500円前後 |
採血+尿検査 | 3500円前後 |
採血+尿検査+エコー検査 | 5000円前後 |
当院は泌尿器科専門の保険診療を行ってるクリニックであり、プライバシー管理と感染予防対策を徹底しております。
老若男女気軽に受診出来る環境を整えております。
泌尿器科疾患でお悩みの方は是非お気軽に東京泌尿器科クリニックまでご受診下さい。