膵管内乳頭粘液性腫瘍(すいかんない・にゅうとう・ねんえきせいしゅよう)(IPMN)
▸どんな病気?
▸原因は?
▸症状は?
▸どんな検査があるの?
▸治療は?
どんな病気?
- 膵臓(すいぞう)で作られた膵液は分枝膵管→主膵管→十二指腸の順に流れていきます。
- 分枝膵管や主膵管に、粘液を産生するモコモコとした、乳頭と表される腫瘍ができることがあります。
- この腫瘍のことを膵管内乳頭(すいかんないにゅうとう)粘液性腫瘍(IPMN)と呼びます。長い名前なので医療者の間ではしばしば英語で「IPMN」と略されます。
- 腫瘍ができると、産生された粘液の影響で膵液の流れが滞り膵管が拡張するため、検査では液体の溜まった袋(のう胞)があるように見えます。
- 拡張した膵管の部位によって「分枝型IPMN」と「主膵管型IPMN」にわかれます。
原因は?
- 現在のところ、原因ははっきりしていませんが関連している可能性のあるいくつかの遺伝子異常が報告されています。
症状は?
- 粘液が産生されると、その粘液によって膵管が閉塞し、急性膵炎(すいえん)を起こすことがあります。
- 大きくなると、拡張した膵管が隣接する胆管を圧迫し黄だん(皮膚や白目が黄色くなります)が出現したり、急性胆管炎を引き起こすことがあります。
- IPMN自体が、がんに進行するリスクがあります。分枝型IPMNでは一年毎に約1%ががん化し、主膵管型に至っては60〜70%はがん化しているとも言われています。
- それとは別にIPMNは通常型の膵癌(すいがん)が合併しやすいことが知られています。分枝型IPMNにおいて通常型膵癌は2〜10%前後の割合で合併し、膵癌死亡率はIPMNがない方と比較し16倍とも言われています。
どんな検査があるの?
- 血液検査(膵酵素、腫瘍マーカーなど)
- 腹部超音波検査(エコー)
- CT
- MRI
- 超音波内視鏡検査(EUS)
- 内視鏡的膵管造影検査、細胞診
基本的には無症状の病気であるが故に、人間ドック・健診の腹部エコーや他の部位を撮影したCTで偶然発見されることが多くなります。でもそれらの検査だけでは詳しい状態が判断できません。血液検査、MRI、超音波内視鏡検査などでより詳しく調べる必要があります。
MRIは主膵管の太さ、のう胞(その正体は拡張した分枝膵管)の大きさや位置など全体像を調べることに適しています。
超音波内視鏡検査は胃カメラと形が似ていますが先端に小さな超音波装置が内蔵されていて、胃や十二指腸の中から直接鮮明に膵臓を観察することが出来ます。この検査では拡張した主膵管やのう胞(拡張した分枝膵管)の中に腫瘍がないか、IPMNとは別の膵腫瘍が隠れていないか、そもそも本当にIPMNかどうかなどを詳細に確認することが出来ます。
以上の検査結果を診療ガイドラインの基準と照らし合わせて、がん化が疑われる場合に「内視鏡的膵管造影検査」において「細胞診」を行ってがん細胞が検出されないか調べることがあります。
治療は?
- 主膵管型IPMNでは、特に主膵管の太さが10mm以上の場合や黄だんなどの症状が出現している場合などでは切除が勧められています。実際に、多くの場合では手術が必要になります。
- 分枝型IPMNではほとんどの場合、経過観察のみで問題ありません。一方でのう胞(拡張した分枝膵管)が3cm以上まで大きくなったり、主膵管まで拡張した場合などではより注意深く経過観察する必要があります。必要に応じて、上でご説明したような「細胞診」を行うなどして手術が必要かどうか判断する場合があります。
- 治療自体は手術で膵臓を切除することが原則です。残念ながら薬で治す方法はございません。胃や大腸の手術よりも難しいことが多く、手術すべきかどうかについては慎重な判断が要求されます。
- 病気の部位によって「膵頭十二指腸切除術」「膵体尾部切除術」「膵全摘術」などが選択されます。
参考:IPMN国際診療ガイドライン2017年版