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胆のう腺筋腫症(たんのう・せんきんしゅしょう)

どんな病気?
原因は?
症状は?
どんな検査があるの?
治療は?

どんな病気?

  • 肝臓で生成された胆汁(たんじゅう)は「胆管」を通って十二指腸に流れます。
  • 胆管の脇にひょうたんのような形でぶら下がっている臓器が「胆のう」です。
  • 胆のう腺筋腫症は、胆のうに部分的、もしくは全体的な壁肥厚を生じる良性疾患です。同時に「RAS(ラス)」と呼ばれる独特な胆のう壁のくぼみを有する点も特徴です。
  • 胆のうの1番底の部分が厚くなる「限局型」、真ん中が厚くなってくびれる「分節型」、全体が厚くなる「びまん型」に分けられます。
  • 胆のう腺筋腫症は人間ドックでも頻繁に発見される、ごくありふれた疾患です。
  • 過去の報告によると人間ドックの0.5%程度の頻度で発見されているようです。現在は検査機器の発達により診断能が向上し、その発見頻度は5%との報告もあります。

原因は?

  • 加齢説
  • 慢性炎症説
  • 胆のう内圧上昇説

これまでいくつか原因となりうる仮説が唱えられています。ここでは3つほどご紹介します。
一つは胆石症などと同じように、年齢や性別によるホルモンバランスの変化が影響しているとする説です。ちなみ好発年齢は40~60歳代で、男性は女性の2倍程度多いとも報告されています。
二つ目は慢性的な炎症が原因とする説。ただ慢性炎症は原因なのか、胆のう腺筋腫症が発生した後に慢性炎症が起こっているだけなのか、はっきりしません。
最後は胆のう内圧上昇説です。内圧上昇に伴って胆のう壁のくぼみであるRASが発生し、その影響で胆のう壁が肥厚するというストーリーです。 いずれも証拠に欠けており、結局は原因を特定するに至っておりません。

症状は?

無症状

胆のう腺筋腫症は無症状です。よって健診や人間ドックで発見されることがほとんどです。

胆石症の合併

胆のう腺筋腫症の発見時には同時に胆石も見つかることがあります。その割合は約5%とも報告されています。胆石が原因となって腹痛、急性胆のう炎などを発症する場合があります。

胆のうがんの合併

胆のう腺筋腫症が直接関係していると証明はされていませんが、「分節型」の5%強に胆のうがんが実際に合併していたという集計結果がいくつか報告されています。
他にも「限局型」では、肥厚した壁が胆のうがんと見分け難いことがあるため診断時には注意が必要です。
また女性よりも男性に合併しやすいと言われています。

どんな検査があるの?

腹部超音波検査(エコー)

エコー検査は最も簡便で、放射線検査のようにお身体への影響を心配する必要もなく、外来でサッと行うことのできる非常に有用な検査です。最初に行うべき検査として推奨されています。
エコーでは胆のう腺筋腫症の特徴である「胆のう壁肥厚」とその壁の中に「RAS(ラス)」を表す小さなのう胞構造を確認出来ます。
診断に欠かせない検査でありますが弱点もあります。高度の肥満患者さんや腸のガスが多い方、食後などでは胆のうを描出しにくくなる点です。

MRI検査

MRIの優れている点は胆のうの立体画像を映し出せることです。これにより、特に胆のう壁内の小さなのう胞構造として「RAS」を明瞭に確認出来ます。
このようにMRIではエコーやCTよりも正確に胆のう腺筋腫症を診断することができ、正確に診断できる確率は90%以上とも報告されています。エコー検査の次に行う検査として有用とされています。
合併した胆のう結石を映し出す能力も高く、CTには映ってこないものもMRIではそのほとんどが映ってきます。磁気のみを利用するため被ばくがないことも利点です。
欠点は狭い空間に30分ほど横になりその間じっとしている必要があることから、閉所恐怖症の方や認知症などの方は難しい点です。

CT検査

エコーやMRIと比較すると胆のう腺筋腫症を診断する際にはあまり有用とは言えません。エコーやMRIで映し出せるような壁肥厚やRAS(ラス)はCTでは分かりにくいからです。そういった意味で、始めに行う検査としては推奨されません。ただ胆のうがんの合併を疑った場合には、その区別のために有用となる場合があります。

治療は?

  • 経過観察
  • 腹腔鏡下胆のう摘出術(外科手術)

経過観察

無症状かつ、胆のうがんを疑う状況になければ経過観察が推奨されます。
ドックなどでの一年ごとの腹部エコー検査で充分でしょう。
ただしこれは間違いなく「胆のう腺筋腫症」であると診断できる場合です。中にはエコー検査でもMRIでも診断に確信を持てないこともあります。こういった場合には後述する手術も視野に入れつつ、方針をよく検討する必要があります。

腹腔鏡下胆のう摘出術

合併した胆石による症状が出現している場合や、胆のうがんの合併が疑われる(合併が否定できない)場合には手術をすべきです。
また「分節型」では胆のうにくびれが生じる影響で、くびれの奥に胆石が充満することがあります。この場合、将来的に胆のうがんが発生しても、充満した胆石に隠されてがんの発見が遅れがちになるため手術すべきとも言われています。

当院では可能な限り正確な診断を行うことを重視しております。ドック結果を放置されている方、胆のう腺筋腫症と診断されたものの不安のある方など、当院ではできる限り不明点や不安を残さないようなご説明、方針を提供します。
気になる方はぜひ一度ご来院下さい。

参考:
胆嚢腺筋腫症の疫学と診断 胆道 34巻2号 163-174 (2020)
胆嚢ポリープ・胆嚢腺筋腫症 Medical Practice vol.37 no.8 1203-1211 (2020)

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