GSM
GSM(閉経関連泌尿性器症候群)とは閉経後の女性ホルモン低下に伴う、外陰部や膣の萎縮変化およびそれに伴う身体症状のことを指し、以前は老人性膣炎、萎縮性腟炎と言われていましたが、2014年に新たな概念として提唱されました。デリケートゾーンまわりに、かゆみ・痛み、頻尿・尿もれ、性交痛・性交後出血などの多岐にわたる症状が起こりえます。これらの症状は他人に相談しづらく、一人で悩まれていることも少なくありません。閉経後の女性の50%に何らかの症状があるとされており、GSMの症状は慢性化・進行化することで、更年期以降の女性のQOLを損ないますので、症状を感じたら早めに治療を開始されることをお勧めします。
症状
GSMの不快な症状はホルモンの低下により、外陰部や膣の粘膜の状態が弱くなることでおこるとされています。
①膣や外陰部に関する症状→膣の乾燥感、かゆみや灼熱感、いやなニオイのおりもの、性交時痛やうるおいの不足
②排尿に関する症状→尿が近い、夜中にトイレに行きたくて起きる、尿もれ、膀胱炎を繰り返す
③性機能障害→セックスのときの痛みや出血、痛みによる性的意欲の低下、膣の緩みや硬さによる違和感
診断
お困りの症状と実際の所見が合致しているか、問診と外陰部や腟内の視診で確認します。
必要に応じて、血液検査を通じてエストロゲンおよび他の関連ホルモンのレベルを検査して、ホルモン分泌低下の状態であるかどうかを調べることができます。
治療
★まずはセルフケアを★
【外陰部の乾燥・ひりつき、膣内の乾燥や臭いのセルフケア】
外陰部の乾燥・ひりつきには、保湿が大切です。デリケートゾーン専用の保湿剤で、外陰部や膣の入り口付近を優しく保湿します。洗う場合も、デリケートゾーン専用の洗剤で優しく洗いましょう。最近では臭いを気にしすぎて、膣内まで洗ってしまい、膣内の善玉菌まで洗い流してしまうことで返って臭いが強くなるという悪循環に陥っている方も少なくありません。膣内は洗わず、専用洗剤で外側を優しく洗うだけに留めるようにしましょう。腟内の善玉菌を増やす意味でも乳酸菌サプリの摂取もお勧めです。
【性交痛】
上記で挙げたようなセルフケアを行っていれば、性交痛のセルフケアにもつながります。もし、性行為中に痛みを感じるようなことがあれば、潤滑ゼリーを使うのが良いでしょう。体に塗るローションとは違い、潤滑ゼリーは膣内に塗ることで自然な濡れ感を出すことができます。ドラッグストアでも簡単に入手することができます。
【膣のゆるみ、尿漏れのセルフケア(骨盤底筋群体操)】
体に余計な力は入れずに、肛門をきゅっと締めあげたり緩めたりを繰り返すだけでトレーニングになります。
【生活スタイルの変更】
アルコール、カフェイン、タバコの摂取を制限し、適切な水分摂取、健康的な食事、適度な運動、ストレス管理などの生活スタイルの変更も症状の管理に役立つことがあります。
★セルフケアで軽快しない方への治療★
腟保湿剤および腟潤滑剤: 軽度の症状の場合、腟保湿剤と腟潤滑剤を使用して症状を和らげることができます。これらは処方箋なしで入手可能です。
腟座薬:女性ホルモンの腟座薬を局所投与します。数日~2週間程度で軽快しますが、重症であれば1ヶ月程度かかることがあります。外陰部に炎症や癒着が起こるほど重症である場合、挿入が困難となり、人により挿入にともなう痛み・違和感があります。
レーザー治療(インティマレーザー):腟内や腟入口部に照射することで、コラーゲン生成を促し、膣粘膜の状態を改善させます。当院ではインティマレーザーを使ってGSMの治療を行っています。膣内に照射をすると、膣内の組織がコラーゲン繊維を造成し、密度が増え、膣の若返りや引き締め、乾燥の改善ができます。また腟入口部への照射を行うことで陰部の乾燥・かゆみ・痛みや頻尿・尿もれ・再発性膀胱炎、性交痛・性交後出血などの症状が軽快します。モードを変えることで尿漏れにも作用することができ、ゆるみ・尿漏れをしっかり改善することができます。通常、1回の照射で約1年効果が続きます。1か月の間隔で2~3回照射することでより効果が持続します。