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動脈硬化症の予防と治療

動脈硬化とは

動脈は血管の一種です。
血管には動脈と静脈があります。動脈は心臓から酸素がたくさん含まれた新鮮な血液を体の隅々まで送り届けてくれます。
動脈はシリコンみたいな弾力性があり、血液がスムーズに流れるよう、管の内壁はとてもすべすべでなめらかです。(スムーズじゃなくてスムースだろ、とツッコミたい人はこちらを)

組織では酸素が消費されて二酸化炭素が生じます。この二酸化炭素は血液の液体成分(血漿けっしょう)や赤血球に吸収されて心臓のほうへと戻され、また肺で酸素と入れ替わりをしてくれます。

では動脈硬化ってなんでしょう。そりゃ動脈が硬くなることだろうよ。あなたはそんなふうに思うかもしれません。じゃあ硬くなることの何が悪いんでしょうか。固くなって丈夫になったりしないんでしょうか。

健康な血管と動脈硬化

イメージしてほしいのは新品のよくまがる、柔らかさと弾力さをもったホースと、そのホースがふるーくなってしまい、硬くて、曲げにくく、ぼろぼろっとなってしまったホースの違いなんです。

しかも人間の血管の場合は、ホースとちがって管の内側にいろいろコレステロールなどがたまって管がせまくなってしまうのがポイントです。

ふつうの人は、これが年をとったから、皮膚みたいに硬くなるんだろうってイメージしていると思うんです。でもそれは大間違い。
よーく調べると
0歳の赤ちゃんには、すでに主な動脈に「硬化」の初期病変がみられというのです!(驚)
それが10歳前後から急に進んでいきます。30歳ごろになると誰が見ても「動脈硬化」といえる血管の異状が認められるようになります。

自分の首が硬くなってしまったり、指が硬くなって動きにくくなると、これは分かるんですけど、血管が硬くなっても皆さん、自分ではどれだけ硬くなっているうか、あるいはどれだけ管がつまってきたか気が付かないんですね。ホースの内側に汚れかすがこびりついて、かたまりになっていても外から見るだけじゃわかりませんよね。

だから、症状が外からわかるようになった時には、もう血管はボロボロなのです。

動脈硬化の症状が、まず現れるのは、脳・心臓・足の3か所です。場所はどこでも血管が詰まったり破れたりするのが原因ですから、詰まった血管の先は酸欠状態です。

1 脳の場合
  • めまい、頭痛、耳鳴りが起こる。
  • しゃべりにくい。
  • 手足がしびれ、力が入らない。
2 心臓の場合
  • 階段の昇り降りで動悸がする。
  • 急いだり、重い荷物を持って歩くと息苦しくなる。
  • 疲れやすい。
3  足の場合
  • 足が冷える。
  • 歩いていると、太ももの裏側やふくらはぎに痛みを感じる。
  • 足をひきずる。
  • 安静にしていても痛む。
  • 軽い刺激でも傷になり、化膿して治りにくい。

動脈硬化は初期症状がほとんどないままに静かに進行していくため「沈黙の病気」といわれます。ですから上記のような症状がでてきたら、もうすでにかなり動脈硬化が進んでいる状態なのです。

血管が詰まる

症状のない人は、区民健診や、会社の健康診断などの採血検査をしたときに脂質などのデータから危険を察知するのが現実的かと思われます。
と、いうより、動脈硬化で元気で仕事しているみなさんが、突然たおれて困ることがないように、健康診断ってやっているのですよ。

いずれにしても動脈硬化のこわいところは症状がないままに進行していくため、身体の変調に気づく頃には、すでにその臓器がかなりのダメージでぼろぼろになってしまっているということです。
さいわいなことに、日本では区民健診、会社の健康診断、などで早く気がつくチャンスが無料で与えられているのです。これをつかわない手はありません。

生活習慣病と動脈硬化の関係

動脈硬化の原因は一つではありません。

この変化を起こしたり、進めたりする条件を「危険因子」と呼んでいますが、その中には「男性」「加齢」のように、自分ではコントロールできないものと、「高血圧」「高脂血症」「喫煙」「肥満」「糖尿病」「ストレス」などのように、自分でコントロールできるものにわかれています。

動脈硬化の原因

こうした危険因子を多く持つ人ほど、動脈硬化が加速度的に速まることがわかっています。

危険因子の中でも「高血圧」「脂質異常症(高脂血症)」「喫煙」は3大危険因子になっているので要注意ですし、みなさんもこの3つの言葉を知らないという人はもはやいないと思います。

ただ、わかっちゃいるけどやめられない、というのが一般的だと思います。それは動脈硬化のせいであっち側へ行ってしまった人の末路をみたことがないからです。

硬化を促してしまう5つの危険因子
  1. 高血圧
  2. 高脂血症(脂質異常症)
  3. 喫煙
  4. 肥満
  5. 糖尿病

(1)高血圧

高血圧のことを「サイレント・キラー(沈黙の殺し屋)」と呼びます。静かに忍び寄ってきて、やがては心筋梗塞や狭心症の下地になりかねないことを警告しているのでしょう。

高血圧は、細い動脈の硬化を促すだけでなく、より太い動脈に生じる硬化も進める重大な危険因子です。塩分の取り過ぎや肥満で血圧が高くなっていくのは、皆さん、ご存知でしょうか。

動脈硬化が進みやすい血圧は「収縮期血圧が140mmHg以上、拡張期血圧が90mmHg以上の場合」で、血圧が高いほど脳梗塞や心臓病などにかかるリスクは当然のことながら高くなります。

(2)高脂血症(脂質異常症)

血液中の脂肪が高い「高脂血症(脂質異常症)」も強い危険因子です。

脂肪分のうち、増えると動脈硬化を促すのは、

・総コレステロール
・LDL(悪玉)コレステロール
・高トリグリセライド(中性脂肪)血症
・リポ蛋白(Lp(a))
・レムナントリポタンパク(レムナント粒子)

などがあり、

反対に減ると動脈硬化を進めるのは、

・HDL(善玉)コレステロール

です。

厚生省の発表によると
「総コレステロール値は220mg/dl以上、LDL(悪玉)コレステロール値は140mg/dl以上、またHDLコレステロール値は40mg/dl以下」になると、狭心症や心筋梗塞の合併が増えるとされています。

(3)喫煙

1日20本以上の喫煙者では、虚血性心臓病の発生が50~60%も高くなります。
喫煙は、がん、肺や消化器などの病気だけでなく、狭心症、心筋梗塞、脳梗塞、閉塞性動脈硬化症といった動脈硬化性疾患の発症を促す強力因子です。

さらに悪いことに、喫煙はほかの危険因子にも影響し、総コレステロール値、LDL(悪玉)コレステロール値を高め、逆にHDL(善玉)コレステロール値を下げますから、二重のリスクをもたらすのです。

喫煙で血が固まりやすくなり、血栓症を起こす危険も高まります。血管も収縮しやすい状態になります。動脈硬化の予防・治療にまず禁煙が必要なのはいうまでもありません。

受動喫煙

喫煙者だけでなく、そばにいて、たばこの煙を吸わされる「受動喫煙者」にも健康被害を与えていることをよく知ってほしいのです。

(4)肥満

肥満の程度を示す指標としてBMI(ボディ・マス・インデックス)があります。次の式で簡単に求めることができますから、時々チェックして正常体重にするよう努力してください。

BMI値=体重(Kg)÷[身長(m)×身長(m)]

例えば、体重65キロ、身長170センチの人ですと

65÷[1.7×1.7]で、BMI値は22.5となります。

日本肥満学会の基準では、19.8~24.2は「正常範囲」、24.2~26.4は「過多体重」、26.4以上は「肥満」としています。

肥満した人は血液中の脂肪が過多になりやすく、さらに高血圧、高尿酸血症、糖尿病などを合併しやすいので、ほかの危険因子にも大きな影響を及ぼしますから、あなどれません。例えば、肥満が進むと収縮期、拡張期とも血圧が明らかに上昇します。

(5)糖尿病

糖尿病の発症には遺伝的な素因も関係しますが、生活習慣、とりわけ過食、運動不足、飲酒など、心がけ次第で改善できる習慣が大きく影響しています。

患者さんには、首の動脈の肥厚、脳血管障害、虚血性心臓病、大動脈硬化、足の閉塞性動脈硬化症などが、糖尿病でない人に比べ高頻度に、しかも全身にわたって起こりやすくなります。

糖尿病になると、ほかの危険因子、とくに高血圧、高トリグリセライド血症、低HDLコレステロール血症などがしばしば起こるようになります。

こうみていくと、危険因子は相互に関係しており、因子が増えれば雪ダルマ式にリスクが高まる反面、一つでも因子を減らせば、よい影響も雪ダルマ式に広がります。治療にも予防にも5つの危険因子を減らすことがいかに重要な意味をもつか、お分かりいただけたと思います。

動脈硬化の検査と治療

1リスク計算の検査

まず、あなたの冠動脈リスクをここから計算してみましょう。
http://www.j-athero.org/general/ge_tool.htm

これりすくんがお手伝いします!

以前に健康診断を受けたことがある人は、その数字がわかるデータを用意してください。

リスク計算には、

・総コレステロール
・LDLコレステロール
・HDLコレステロール
・トリグリセライド(「TG」「中性脂肪」も同じです)
・血圧
・空腹時血糖値
・心臓病の家族歴

という情報が必要です。もし検査データがないという人は、ユアクリニックで採血検査もお手伝いできます。

採血で検査します

上にもある情報は、動脈硬化に悪い影響を与える高血圧、糖尿病、脂質異常症(高コレステロール血症)をみるためのものです。

2 画像で動脈硬化の状態を直接みるための検査

◆動脈硬化の程度を知る検査

  • 冠状動脈:血管内エコー・シンチグラム・MRI・血管内視鏡・冠状動脈造影
  • 脳動脈:シンチグラム・MRI・脳動脈造影
  • 頸動脈:エコー(ユアクリニックお茶の水)
  • 大動脈:エコー(ユアクリニックお茶の水) CT(外部委託) MRI(外部委託)
  • 下肢動脈:エコー(ユアクリニックお茶の水) 脈波(ユアクリニックお茶の水) シンチグラム・エコー・脈波・血管造影

3 治療

原因が分かっているのですから、この原因をひとつひとつ丁寧に対処していくことです。

  1. 高血圧には、運動、食事、そして薬
  2. 脂質異常症には、運動、食事、そして薬 
  3. 喫煙には禁煙指導と薬剤での禁煙    ユアクリニックお茶の水の禁煙外来も!
  4. 肥満には、運動、食事
  5. 糖尿病には、運動、食事、そして薬

動脈硬化の進行を予防する生活習慣のポイント

誰でも、年をとれば動脈が硬くなっていってしまうものですが、できるだけ早くから「生活習慣の改善」をとりいれることで、予防できる範囲は大きく広がります。

ひとつめは運動不足の解消です。

動脈硬化予防に効果的なものに適度な運動があります。1回30分程度のウォーキングや水泳、エアロビクスを生活に取り入れてみましょう。

適度な有酸素運動を心掛けましょう
特にウォーキングは、いつでも気軽に行なえますのでお薦めです。降りる予定の一駅手前で降りてあるいてみませんか。歩くだけだとつまらないという人は、電話でご家族や大切な人と話しながら歩いてみてはどうでしょう。

適度な運動をすることにより、太りにくい体質をつくることができます。ただし、中高年の場合はあまり激し過ぎる運動もまた危険です。
サステイナブル、つまり半年でも一年でも続けられる運動を心がけましょう。

糖尿病や高血圧の場合は、これらの病気をしっかり治療することが動脈硬化の進行を食い止めることにもなります。
メタボ状態にあって、これらの病気予備軍の人は、肥満や運動不足、喫煙、過度の肉体的・精神的ストレスなどの「生活習慣病の危険因子」を除いたり滅らしたりする努力をしましょう。それもまた、動脈硬化予防になります。

ふたつめは食事です。

厳密には脂質異常症のタイプによって違うこともありますが、原則として

  • 過食を抑え、適正体重を維持する
  • 肉の脂身、動物脂(牛脂、ラード、バター)、 乳製品、及び魚卵を含めた卵の摂取を抑え、 魚、大豆の摂取を増やす。 
  • 野菜、海藻、きのこの摂取を増やす
  • アルコールの過剰摂取を控える
  • 精白された穀類を減らし、未精製穀類を増やす
  • 食塩を多く含む食品の摂取を控える

ことがポイントです。

食事療法について

しかしあんまり厳密にやってストレスになってしまっては逆効果です。

また糖質制限をやっている人も増えてきました。ただ運動と同じで、いきなり極端にはしると長続きしません。継続してもらうこと、習慣にしてもらえることが一番大事なので、ロカボサイトなども活用していくことをおすすめしています。

サプリメントも一般的になってきました。しかし「健康食品」には、成分を濃縮していたり、医薬品の成分を含んでいるものも、多くあります。

サプリメント
効果を期待して摂り過ぎたりすると、危険性も増します。また、服用している医薬品との相互作用で、思わぬ健康被害が発生することもありえます。そのため担当医師には、「健康食品」やサプリメントを摂っていることをきちんと伝えましょう。

3つめが禁煙です。
http://www.jstc.or.jp/

禁煙はマストです。あなたのお財布も豊かにします。時間もとりもどせます。

YouTubeで「禁煙」と検索すればいくらでも禁煙する方法はでてきます。
喫煙防止健康教育教材 よしもと芸人コント風教材 禁煙してもまた吸いたくなる理由を知ろう!

iQosなどの、電子タバコもやめましょう。

禁煙

薬を活用する方法も悪くはありません。ニコチンには精神的依存と肉体的依存の二種類がありますが、薬によって、肉体的依存のほうは7日もしないうちに、すぱっとかんたんになくなります。

4つめが肥満の解消です。

1番の運動、2番の食事にも影響してくるはなしです。1,2がきちんとできれば、4番は改善してくると思います。

しかし、睡眠不足が肥満に影響していることはあまり言われていません。
早寝早起きも大事なポイントなのです。

早寝早起き

また、ちまたにはダイエット本があふれていますし、これからもとどまることなく、発売されてくることでしょう。そうした情報にふりまわされずに、医師と一緒に本気の減量をすることが結果につながってくることでしょう。

5つめは糖尿病の治療です。

こちらについては別のページでまた詳細にお伝えしていきましょう。

 

おまけ:パンフレット「動脈硬化はこわい病気のはじまり」
http://www.j-athero.org/general/pdf/doumyaku_p2020.pdf

 

文責:杉原 桂

SDGs

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