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心筋梗塞について

心筋梗塞とは

私(杉原医師)が町田市民病院勤務時代にお世話になったS先生は、定年まで勤め上げてさてこれからというとき、山登りの最中にこの病気で絶命されてしまいました。あまりにも突然でびっくりしたことをよく覚えています。

人の命をとつぜん奪う、心筋梗塞。どんな病気なのでしょう。

心臓にいく血液が不足して起きる病気のことをまとめて虚血性心疾患と言います。喫煙やLDLコレステロールの高値高血圧メタボリックシンドロームなどにより心臓の血管の動脈硬化が進行すると、狭心症や心筋梗塞などの虚血性心疾患を引き起こしやすくなります。

虚血性心疾患には、狭心症や心筋梗塞があります。ここでは両方を説明しておきましょう。

冠動脈

狭心症は動脈硬化などによって心臓の血管(冠動脈)が狭くなり、血液の流れが悪くなった状態です。主に歩行などの動作をしているときに、胸を圧迫されるような痛みの発作が繰り返し起こり、数分以内におさまります。発作が起きたときには、冠状動脈を拡張する作用を持つニトログリセリンを舌下服用すると一時的にはおさまります。

狭心症はなんらかの動作中に起こることが多いのですが、安静時に冠動脈のけいれんが起こり、狭心症の発作が起こる場合もあります(冠攣縮性狭心症)。

一方、心筋梗塞は、動脈硬化によって心臓の血管に血栓(血液の固まり)ができて血管が詰まり、血液が流れなくなって心筋の細胞が壊れてしまう病気です。

「e-ヘルスネット」厚生労働省運営  山岸良匡先生の記事 2019
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-005.html より一部改変

狭心症と心筋梗塞のちがい

 

狭心症

心筋梗塞

胸痛の特徴

突然に締め付けられるような重苦しさ、圧迫感がある痛み

締め付けられるような激しい痛み。不安感、重症感がある。

発作の
持続時間

1~5分程度。長くても15分以内

15分以上。数時間続くことも。

ニトログリセリンの効果

多くの場合著効

効果がない

心筋梗塞が起こる前兆と気を付けたい症状

前兆があればもちろん対応できるのですが、なにも前兆がなくて心筋梗塞を発症する人が1/3といわれています。

残りの2/3は、数日前から数時間前より「梗塞前狭心症」といって胸痛をくりかえしたあとに冠動脈(心臓そのものを栄養している血管)が完全に詰まって心筋梗塞をおこします。

胸痛といっても、具体的には激痛の発作であり、呼吸困難、激しい脈の乱れ、吐き気、冷や汗や顔面蒼白といった症状を伴います。

心筋梗塞の危険

痛みは20分から数時間にわたることもあります。
激痛は胸だけにおわることなく、胃のあたりや腕、肩などにも広がって起こることがあり、これを放散痛と言います。

心臓の血管が一瞬で詰まると、突然死することもあります。

前兆をもうすこし解説しておきましょう。

いわゆる不安定狭心症という状態があります。
最近起こってきた胸痛などの症状、あるいは運動時、例えば駅の階段を昇る時だけに胸痛が起こっていた人が、もっと軽い動作でも胸痛が起こってきたり、安静にしている状態でも胸痛が起こってきたりするようになった状態です。

息苦しさ

これも前兆の1つです。

その場合の心臓の状態を観察してみますと、冠動脈(心臓を栄養している血管)が細くなっているだけで、詰まってはいない狭心症の場合、安静にすること、ニトログリセリンの錠剤を舌の下にいれたり、ニトログリセリンのスプレーを舌の下にふいたりすることにより数分で痛みが消失します。

長くても痛みが20分を超えることはありません。

それ以上継続するようなら冠動脈が完全に詰まっている心筋梗塞を起こしている可能性が強くなります。

胸痛発作が1日に何度も起きたり、持続時間が長くなったりするような場合は心筋梗塞を起こす前兆であり、速やかに病院を受診する必要があります。

また、前兆として、背中や顎、左腕、胃のあたりが痛むこともあります。1日に何度も繰り返すようでしたら、いずれにしても早めの病院への受診が重要です。

逆に、前兆があった後に心筋梗塞を起こした人の方が、前兆なしに起こした人よりもその後の心臓の機能の回復が早く合併症も少ないことが知られています。

これは、胸痛発作が何度もあると心臓の筋肉が血液の足りない状態になれてきたり、側副血行路(そくふくけっこうろ)といってほかの冠動脈から詰まりかけている冠動脈に脇道がのびてきて、血流不足の解消を自然に治癒させていく現象が理由といわれています。

心筋梗塞の治療法

治療編です。
治療と言っても、一度血流が詰まって死んだ心臓の筋肉はもどりません!
助かったら、御の字だと思ってください。死亡率は30%といわれています。

助かっても、生活を完全にかえなければ、また心筋梗塞はおきます。

動悸、息切れ、めまいに注意

原則として、すべて入院しての検査、治療が必要です。
狭心症や心筋梗塞が疑われる場合、心臓カテーテル検査を行って、狭くなっているところや詰まっているところを見つけ、その部位で風船(バルーン)を膨らませて血管を拡張させるPTCA(経皮的冠動脈形成術)という治療や、さらにその狭くなった血管部分にステントという器具を入れて血管を広げて固定する治療がよく行われます。また、冠動脈バイパス手術が行われる場合もあります。

どれも生き残った心臓の筋肉の細胞へ血流を改善させることが目的です。

さらに再発予防のためにほぼ全員が薬を飲む必要があります。急性心筋梗塞で入院しカテーテル治療を受けてから間もない患者は、血液をさらさらにする薬を絶対に欠かせない時期があります。

薬物療法

ほかにも心臓に関する多くの薬は非常に重要なものですので、忘れずに決まった時間にきちんと服薬をするということ、また服用できないような状態が生じた場合には、勝手に服用を中止せず医師に相談することが重要です。

心筋梗塞を予防するために

予防です!
みなさん、本当に病気の予防をあなどってます。

だって道路の場合だとしたら、海におちそうな崖っぷちにある道路があったら、落ちてから治療すればいいとか思いませんよね?落ちないようにロープや柵をつけますよ。土だけだったら雨で滑りやすくなるから、木で足台を並べたりもするでしょう。

だけど、自分の体にはそういうこといっさいしない人、いるんです。

3大危険因子は、喫煙・LDLコレステロールの高値高血圧です[1]。またメタボリックシンドロームも危険因子の一つです。

健康診断でこれらを早めに見つけることが重要です。生活習慣では、喫煙のほか、動物性の油に多く含まれる飽和脂肪酸のとりすぎ、お酒の飲み過ぎ、食塩のとりすぎ、運動不足、ストレスが虚血性心疾患のリスクを高くします。一方、魚や野菜、大豆製品には、虚血性心疾患を予防する働きがあります。

食事療法について

参考文献

1.循環器病の診断と治療に関するガイドライン(2011年度合同研究班報告).虚血性心疾患の一次予防ガイドライン(2012年改訂版), 2012.
http://www.j-circ.or.jp/guideline/pdf/JCS2012_shimamoto_h.pdf

「e-ヘルスネット」厚生労働省運営  山岸良匡先生の記事 2019
https://www.e-healthnet.mhlw.go.jp/information/metabolic/m-05-005.html より一部改変

 

そして、もう少しストレスやうつが心臓に影響を与えることもしっておいてほしいのです。

循環器疾患、なかでも心筋梗塞や脳梗塞は、血栓により突然動脈が閉塞して発症し、重篤な結果を引き起こす疾患です。加齢以外に喫煙・糖尿病・高血圧・脂質異常症・肥満などの動脈硬化をきたす生活習慣病が原因疾患として最重要視されています。

しかし、いろいろなデータベースから⼼筋梗塞の発症理由を調べてみると、ストレスやうつがかかわっていることが明らかになっています。

ストレス、うつ

古くは A 型性格と⼼筋梗塞との関連が指摘されています。
⽬標達成感が少なく常に完全性を切望したり、いつも認められることを望み、多くのことにかかわり時間に追われるように加速度的に思考したりや⾏動する、精神的・⾝体的にてきぱきとした行動をする、という特徴を持つ人に心筋梗塞が多いと報告されました。また湾岸戦争の際に、警報やミサイル着弾にともなって心筋梗塞発症数が増加することがイスラエルより報告されました。

このような精神的・⾝体的ストレスが、直接・間接的に⼼筋梗塞を発症させる現象は⽇本⼈においても同様です。

⼀般的に⼼筋梗塞の発症は、午前中の⾎圧上昇や⾎⼩板凝集能亢進の⽇内変動に合わせて午前中に多いのですが、働き盛りの⽐較的若い男性喫煙者では夜の遅い就業中に発症するなど、社会・経済的要因のかかわりがあるようです。

また有職者男性では海外同様ブルーマンデー(憂うつな⽉曜⽇)の発症が多いものの、⾼齢⼥性では⼟曜⽇の発症が多く、週末に主婦への依存度が⾼いことで⼥性配偶者へのストレスとなっている⽇本独⾃の発症要因として注⽬されています。

うつの⼼筋梗塞への影響

また、うつも⼼筋梗塞などの冠動脈疾患に多いこと、うつを持つ⼼筋梗塞患者さんの予後が悪いことも知られています。
うつが⽣命予後に影響するメカニズムとして、うつ症状がある⼈の不健康な⽣活習慣が⼀因と推測されています。もうひとつは、うつに伴い分泌されるストレスホルモンが直接的に循環動態に悪影響を及ぼすもので、例えば⾎中カテコラミンの⾼値による⾃律神経異常(交感神経優位)、⾎⼩板凝集能の亢進、⾎管内⽪機能の低下などが報告されています。

自律神経の異常

ストレスやうつが⼼筋梗塞の危険因⼦として重要であるならば、その治療により⼼疾患の改善が期待できるかもしれません。
現在の経済・社会状況からは、右肩あがりの経済成⻑はできず、仕事中⼼の⽣活スタイルの限界が予感されます。ストレスやうつに対する精神的ケアが予防医学の点からも今後ますます重要となりそうです。

「e-ヘルスネット」厚生労働省運営  ⻄ ⼤輔先生の記事 2020 より一部著者による追記・修正

 

文責:杉原 桂

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