食物アレルギーの発症を防ぐ
「乳幼児健康診査身体診察マニュアル」p.30より抜粋
湿疹があっても離乳食開始時期を遅らせない 食物アレルギーの発症を防ぐために
食物アレルギーは乳幼児期に多く、近年増加傾向にある。
以前は食物アレルギー発症予防のための妊娠中や授乳中の母親の食物制限や、乳児の離乳食開始時期遅延、特定の食物除去が推奨された時代もあった。
ところが、最近の研究ではこのような食物除去は予防効果がないばかりか、湿疹がある乳児で卵やピーナッツを除去すると、その食物へのアレルギーが増加するという、これまでの予想とは逆の結果になることが明らかになってきた。
日本で実施されたランダム化比較試験でも生後6ヶ月未満にアトピー性皮膚炎を発症した乳児が生後12ヶ月まで鶏卵摂取を完全に除去すると生後6ヶ月から少量の加熱全卵を摂取した乳児と比べて、卵アレルギーの発症率が有意に高くなった(37.7% vs 8.3%)
これまで生後3,4ヶ月の乳児に湿疹やアトピー性皮膚炎があると「念のため卵は1歳まで控えておきましょう」といった指導が多くなされてきたが、むしろ卵アレルギー増加の一因となった可能性がある。
食物は経口摂取すると腸管で免疫寛容が働きアレルギーが抑制される一方で、湿疹などの炎症がある皮膚から吸収されると異物とみなされ攻撃の対象になる(経皮感作される)ためと考えられている。
そのため湿疹のある乳児では速やかに皮膚の治療を行い経皮感作を防ぐとともに、生後5,6ヶ月ごろから少量の卵も含めた離乳食を開始して経口免疫寛容を誘導することが食物アレルギーの発症予防のために有効だと推奨されている。
日本小児アレルギー学会HP 参照
もちろんすでに食物アレルギーを発症した乳児に原因食物摂取を促すことは危険であるが、血液検査での抗原特異的IgE抗体陽性(感作)のみで食物アレルギーと確定診断はできない。
感作のみを理由とした安易な食物除去指導は推奨されず、診断に迷う場合には食物負荷試験が実施できる専門医へ紹介することが望ましい。