赤ちゃんの発熱について
こちらは日本小児科学会東京都地方会が作成した「こどもの健康週間2019」より抜粋、一部杉原が変更したものです。
こんにちは。小児科医の杉原です。
赤ちゃんの発熱が気になる、という相談がありましたので、こちらで答えていきたいと思います。
赤ちゃんも熱が出ることはあるのですか?
生後6ヶ月以内、とくに生後3ヶ月未満の乳児は、妊娠中にお母さんの免疫を胎盤を通じてもらっているので、一般的には感染症にはかかりにくいものです。
逆にそのような状態のはずなのに、熱がでているので注意が必用になります。
また、ワクチンを打ち終えていない月齢だと、ワクチンで防げるはずの重病にかかっていることがあるので要注意なのです。
何℃以上が発熱でしょうか?
大人とは異なり、37.5℃以上のときが発熱です。
大昔には、37.0℃のところに赤い線が入っている水銀体温計がありましたが、これは間違い。
赤ちゃんは体温のコントロールが未熟ですので、環境温度(部屋の温度、服の着せすぎ、布団のかけすぎ)によって簡単に体温がかわります。
「熱があるかな」と思ったら少し時間をあけて何回か測ってみることをおすすめします。
ほっておいても良いでしょうか?
一般にこどもの発熱の多くは、「かぜ症候群」とよばれるウイルス感染症が原因です。
安静と水分・栄養補給するだけで軽快していきます。
しかし生後3ヶ月未満の乳児の発熱では話が違います。
必ず小児科を受診してください。
どうして早く小児科を受診したほうがいいのでしょうか?
生後3ヶ月未満の乳児は、発熱以外の症状がわかりにくく対応が遅れがちになります。
また軽いウイルス感染症が多いとはいえ、抗菌薬が必用な細菌感染症が原因である場合もあります。
小児科を受診したあとに精密検査が必要になることは、少なくありません。
発熱以外にどのような症状があるのでしょうか?
おっぱいやミルクの飲みが悪くなる、顔色が悪い、不機嫌でずっと泣いている、などがあります。
しかし大事なポイントは、ママをはじめ養育者の感じるなんとなく「いつもと違う」という直感です。
これは測定しづらいので科学的ではない、と思われるかもしれませんが小児科の教科書には必ず書いてあることですし、小児科専門医なら誰もが口を酸っぱくして研修医に教え込むことでもあります。
どのような検査がおこなわれるのですか?
生後3ヶ月未満の乳児の発熱では、多くの場合、入院しての検査が必要になります。
具体的には、血液検査(注射で血をとる)、尿検査(紙コップではなく、膀胱まで細い管をいれます)、のどや鼻の検査(長い綿棒でばい菌をしらべます)、レントゲン撮影がすぐにおこなわれます。
重症な細菌感染症の代表である、細菌性髄膜炎を起こしてないかどうかを調べるために、背中に針をさして髄液をとる検査が行われることもよくあります。
そうはいってもヒブワクチン、肺炎球菌ワクチンが普及してから、赤ちゃんの背中に針をさしての髄液検査をする機会はかなり減りました。
赤ちゃんの発熱は重症な細菌感染症であることが多いのでしょうか?
実際は、生後3ヶ月未満の乳児においても、ウイルス感染症による軽症のものがほとんどです。
しかし、大人や3歳をこえた子どもの発熱とはことなり、ウイルス感染だろうとたかをくくって対応することはありません。
まずはワクチン接種歴を調べます。
そして大丈夫かどうか精密検査をおこない、その後の十分な観察を通じて、細菌感染症にかかっていないことを判断することが重要です。
細菌性髄膜炎になると、元気だった赤ちゃんが数時間後に死亡してしまうこともよくあるからです。
ですので、周囲にワクチン打たないという方々がいると非常にリスキーなのです。
どのような治療が行われるのでしょうか?
通常、解熱剤が使用されることはありません。
また赤ちゃんの状態や種々の検査結果を総合的に判断し、治療方法が選択されます。怪しいと思ったら入院の上で治療が行われることが一般的です。